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そうして僕と彼女は近くのベンチに腰を下ろした。
彼女の手には、『甘さ抜群!!とりあえず甘い』と書かれた缶コーヒーが握られている。
ちなみに、プルタブも僕が開けてあげた訳だが。
そんな缶コーヒーを両手で持ち、ちょびちょびと飲む彼女は、なんか小動物みたいで可愛い。
無表情な上、言葉を中々発してくれない為に感情を掴みにくいが、小さな手で缶を握りしめているところを見ると、どうやら美味しいらしい。
そんな彼女はしばらくの間、ちょびちょびと飲んでいた缶コーヒーを僕に差し出してきた。
「…………」
またも無言で僕の顔をじっと見つめながら。
「くれるの?」
そう言えば半分こって言ってたなと思いつつ僕が尋ねると、彼女はこくりと頷いた。
「ありがと」
そう言って缶コーヒーを彼女の小さな手から受けとる時、彼女はほんの少しだけ笑顔になった気がする。
ほんのちょっとの表情の変化で、しかも一瞬だったので見間違いかも知れないが、僕にはそう見えた。
さて、渡された缶コーヒーだが、さっきまで彼女が飲んでいたので、僕は飲んでもいいものかと少し戸惑ってしまう。
缶コーヒーを受け取ったものの、中々口を着けない僕を彼女はまた無言で見つめている。
間接キスとか嫌じゃないのかな?
なんて事を気にしているのは僕だけか。
僕が口を着けた物を彼女が飲む訳でもないし。
なんか彼女に無言で早く飲んでって言われてる気もする。
「いただきます」
僕は無言で見つめる彼女にそう言ってから、缶コーヒーに口を着けた。
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