chapter.1 出会い

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彼女は僕を無言で見つめ続けている。 「おいしいよ。ありがと」 とりあえず、彼女にお礼を言う。 本当はめちゃくちゃ甘くて、若干驚いたが、まぁ、せっかく缶コーヒーを分けてくれた彼女の気分をわざわざ害することもないかとふせておいた。 そんな彼女と二人、缶コーヒーが空になった後もしばらくベンチで座って過ごした。 まぁ、当然彼女は無言で無表情だった訳だが。 そうして彼女とよくわからない時間を過ごした後、家に帰ろうかと立ち上がった僕だったが、またしても腕を掴まれた。 「今度はどうしたの?なにか欲しいの?」 そんな彼女に尋ねるが、彼女は例によって首を横にふるふると振るだけである。 だが、ここで信じられない事が起きた。 「……や」 彼女が自らの意思を口にしたのだ。 何がいやなのかは、全くもって理解不能だが。 「ん?何がいやなの?」 そんな彼女に尋ねてみても、僕の腕をギュッと掴み、無言でじっと見つめてくるだけ。 んー、わからない。 「ベンチが合わない?」 ふるふる。 「空気が冷たい?」 ふるふる。 「自販機?」 ふるふるふるふる…………。 彼女は僕の言葉に無言で首を振り続ける。 んー。わからん。 困った僕はありえない事を口にする。 「んー、僕が帰るのがいやなの?」 彼女は僕の顔をじっと見つめて首をこくりと縦に振った。
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