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カウンセラーは柔和な顔をした、定年間近とも取れる年齢の男性だった。
多分、ある程度の経験を大きな病院で積み、それから開業したのだろう。
待合室には患者だろう人達がリラックスした様子で、思い思いにその時間を過ごしている。
そんな中で緊張した面持ちの私は、他の患者からも初診だと感づかれているだろう。
来院してすぐ、私の名前が呼ばれる。妻が知り合いを通して予約を入れていてくれたらしい。病院は待つものだと思っていた私は、軽く安堵の息を吐き、看護師に促されるまま診察室に入った。
しかしそこは、診察室というより、会社の応接室と呼んだ方がしっくりとくる、センスの良い内装が施された穏やかな空間だった。
流れる音楽もリラックス効果があるようで、先生の顔を見ても肩肘を張る事は無い。
先生に促され、クッションの効いたソファに腰を沈めた。そのまま世間話を始めるが、先生の会話は巧みで、気づけば私の心の深い部分までも口にしているのだった。
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