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白い視界に、漸く周囲の様子が浮かび上がると、そこは家の地下にあるワインセラーだった。
妻がこのワインセラーを気に入った事もあり、この家を購入したのだ。
そこで思い出した。悪夢が始まったのはこの家に越してきてからだ。
そしてその内容の断片も思い出す。
それは痛みと哀しみと苦しみ。
そんな感情の流れ込んでくるイメージ。
求めながら拒絶され、それでも求める苦しみ。
毎日繰り返される痛み。
私の視界に映るワインセラーには何もなく、子供が一人横たわっていた。
薄汚れた子供。
垢と汚れと、そしてきっとそれは、こびりついた血液。
肉の殆ど付いていないその身体からは、その子供が少年か少女かすら分からない。
その子供の元に、足音が近づいてくる。子供は恐怖からか、その身体を硬直させた。
足音の主は、先生と女だった。
そこに映る二人は、今のように老いてはおらず、私と同じくらいの年齢だろう。
だが、確かにこの二人だった。
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