こども

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子供が二人に抱き着いていく。 すると彼らの姿は黒い光に包まれ、空間が歪んだように見えた。 その歪みに二人の姿は飲み込まれていく。 二人は恐怖に引き攣った顔で、助けを求めるように手を伸ばしてくる。しかし最後は、徐々に侵食してくる空間の闇から覗く手だけが残り、それすらも消えて無くなっていた。 子供はそれに続いてその歪みに溶け込んでいき、私が見ている間にも、完全にその姿を消したのだった。 気づけば、そこには私と妻の姿しか無かった。椅子と私の身体を縛り付けていたロープは緩んでいる。 私は慌てて、今だ意識を取り戻さない妻を揺り起こした。妻は何も覚えてないようで、何があったか私に尋ねてくる。 しかしそれに答えられる訳も無く、私はただあやふやにはぐらかすしかなかった。 暫くしてこの家を手放す事にしたが、勿論その理由も言える筈もなく、訝しむ妻をどうにか説得したのだった。 そうして引っ越しの当日。 玄関に鍵を掛け、車に乗り込む。そこに、 「ありがとう」 そう囁き声が耳元で聞こえた。 私が家に視線を送ると、玄関の隣にある窓に、穏やかな笑顔を浮かべた子供の姿が映っていた。その後ろには影が二つ。 私も軽く笑みを浮かべると視線を反らし、隣の妻に視線に戻す。彼女も穏やかな笑みを浮かべて私を見ていた。 何故か彼女と子供が重なって見えたが、すぐにそんなおかしな考えは払い落とし、車を発進させたのだった。
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