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すべては無駄だったのだろうか……
かつて英雄と呼ばれた青年騎士は今そう心に刻んでいた。
ただ生きたいと願っただけであった。それだけでこの力を得た。
そしてそれは平凡な生活を送っていた自分の生活を英雄のそれにさせた。
そして戦いから逃げられなくなった。
戦う事は決して好きだった訳ではない。でも力を持ってしまった自分がやらないといけない戦いがここにはあった。
すべてが鎖のように絡みつき、自分の自由を奪っていく。
その感覚にいつも悩まされていた。
「なぁ、相棒」
青年騎士はそう共に死線を潜り抜けてきた相棒に声をかける。
「なんだ?」
重厚なその威圧感を伴った声は今では安堵感を自分に与えてくれる。
「俺で最後にしてくれよな。こんな重荷を背負うのは」
青年騎士の言葉にその男の相棒は鼻で笑うような声を出した。
「ふん、それはお前次第だ」
青年騎士の相棒は先ほどよりも少し柔らかな口調でそう答える。
「へっ、やっぱりそういう事か」
青年騎士はそう悪態とつくと右手に持った双刃の剣を構えた。柄の中心には真紅に輝く宝玉が埋め込まれいる。柄の両側から刃の出ているこの類の剣は双牙剣と呼ばれている。彼はその双牙剣ヴァルフェンリルを構えると剣気を込めた。
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