第二章

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 ゆっくりと息を吸い込み、まっすぐに的を見据える。 弦から手を放すと、矢は的を外れてそのまま壁に突き刺さった。 溜息を吐きながら、後藤はその場を離れた。 彼は弓道部員であった。 地区大会に出場したこともあり、腕は悪くなかった。 しかし、今日は調子が出なかった。 部活が終わり、後藤が帰る準備をしていると、誰かが背中を叩いた。 振り返ると、先輩の藤本琢磨が立っていた。 「後で話したいことがあるから、ここを出たら中庭で待っててくれ」 「はい、分かりました」 失礼します、と一礼してから後藤は弓道場を後にした。
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