第一章

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 窓の方に目を向けると、外には雪が積もっていた。 彼は、手に持っていたシャープペンシルを、放り投げるようにしてノートの上に転がすと、大きく背伸びをした。 現在大学2年生の彼は、名を後藤隆祐という。 自分が淹れたコーヒーを口に含むと、体の力が一気に抜けた気がした。 ふと壁に掛けてある時計を見て、二時間以上休憩なしで作業を続けていることに気付いた。 彼がしていた作業とは、現在進行中の研究について、レポートにまとめる作業のことである。 首を前後左右に傾けると、体が固まっているのがよく分かる。 彼は、出かけようと思い、クローゼットから黒いジャンパーを選び、羽織ってから 部屋を出た。 階段を下りていくと、ダイニングキッチンで母が紅茶を飲みながら一服しているところだった。 「ちょっと出かけてくるよ」 母にそう告げてから、彼は家を出た。    まず、家の近くにあるコンビニで、缶コーヒーを一本買った。 今日は、一段と冷えるので、何か温かいものが欲しいと思ったのだ。 その後、彼はバスに30分程乗って、都内最大級の書店へ行った。 面白そうな本が並んでいて、どれも彼の興味をひくものだった。 しかし、彼の目的は、それらの本を見るためではなかった。
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