第二章

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 ドアを開け、病室に足を踏み入れると、辺りを見回した。 ドアが閉まるのとほぼ同時に、病室の左奥のベッドに寝ていた亜希子がこちらを向いた。 彼女の眼は赤くなっていた。 後藤が歩み寄ると、亜希子は微笑みながら、「わざわざ来てくれてありがとう」と言った。 しかし、その声は枯れていて聞き取りにくかった。 「本当に、何と言ったらいいか・・・お悔やみ申し上げます」 後藤は、頭を下げた。 彼の眼も、今にも涙があふれ出そうなほど潤んでいた。 彼はそのあと少し亜希子と話をしてから病室を出た。 亜希子は、2か月ほど前に胃癌を患い、区立病院に入院している。 緒形が生きていた頃は、大学が終わった後、毎日病院に見舞いに行っていたという。 後藤が病院を出て数分後、雨が降り始めた。 天気予報が、夕方からは雨になるといっていたにもかかわらず、傘を忘れてきたことに、彼は気づいた。 そっと、彼は舌打ちした。 その後、彼は帰宅した。 自分の部屋に入り、テレビの電源を入れると、ニュース番組が緒形の死について報じていた。 そのニュースの中に出てきた緒形の顔写真は、この間会ったばかりの筈なのに、ひどく懐かしい顔に見えた。
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