第三章

2/14
前へ
/73ページ
次へ
 警察は、徐々に捜索範囲を拡げていった。 阪井も事情聴収の為、東奔西走していた。 「それでは、その時間に何か変わったことはありませんでしたか?」 阪井が事情聴収を進めていると、携帯の着信音が鳴った。 「ちょっと失礼します」 そう断ると、彼は懐に手を突っ込み、携帯電話を取り出した。 後輩の、山岡という刑事からだった。 「もしもし、調子はどうですか?」 「ああ、今のところは犯人に関する重大な証言は得られていない」 「そうですか。それで用件ですが、被害者の父親から話を聞く許可が取れたので、現場に戻ってきていただけますか」 「ああ、分かった。すぐに行く」 そう言ってから、彼は電話を切った。 腕時計を見ると、午前10持を少し過ぎたところだった。 「すみません。急な用事が入ったので、失礼します。お忙しい中、ありがとうございました」 先程まで話を聞いていた中年女性に頭を下げた。 「いえいえ・・・。犯人、早く判るといいですね」 女性は言った。 「ええ、全力を尽くします」 そう言ってから、彼は走り出した。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加