第三章

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 「後藤君、ちょっとこっちに来てくれるかい?」 呼びかけてきたのは、ブラウンのダウンジャケットを着た刑事だった。 「はい、分かりました」 そう言うと後藤は、弓を壁際に立てかけた。 それから、刑事の後について、弓道場を出ようとした。 「ちょっと待ってください。後藤に何の用があるんですか?」 振り返ると、藤本が立っていた。 「緒形征司君が殺された事件について、少し話を聞くだけだよ。すぐに終わるから」 そう言ったのは、もう一人の刑事だった。 「そうですか。分かりました」 藤本は一礼すると、練習に戻ろうとした。 その時、二人の刑事がひそひそと話を始めた。 そして、ブラウンのジャケットを着た刑事は、藤本の背中に向かってこう言った。 「ちょっと待ってくれるかい?君にも、話を聞かせてほしい」
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