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阪井は、事件について書かれた手帳を見た。
これまでに得られた情報は、次のとおりである。
・被害者の死亡推定時刻は、午後4時30分である。
・凶器は、恐らくカッターナイフである。
・近隣の住人の話によれば、現場周辺に、黒のパーカーを着た怪しい男がいたという。
・被害者は事件当日、大学に行かなかった。
・被害者は事件前日、後藤隆祐と喫茶店を訪れている。
以上を踏まえて、事情聴収を進めてきた。
「じゃあ最初に、君の名前を教えてくれるかい?」
阪井は訊いた。
「藤本琢磨といいます。理学部の4年生です」
「そうか、じゃあ早速だけど、緒形君が殺された事件については知ってる?」
「俺は、事件についてはあまり知りません。次の日に大学に来て、初めて知ったんです」
藤本は事件について、そう答えた。
「じゃあ、一昨日の夕方は何をしてた?」
今度は、山岡が訊いた。
藤本は少し考えた後、
「家にいました。それで、読書をしていました」と答えた。
「最近、緒形君に変わったところはなかった?」
山岡は、続けて訊いた。
「いいえ、無かったと思います」
阪井は思わず唸った。
そして、彼からは重大な証言は得られないだろうと思った。
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