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その後、藤本を練習に帰すと、今度は後藤に話を訊いた。
「マンションに住んでいる人の話によると、近くで、黒いパーカーを着た怪しい男を見たという証言があるんだけど、見覚えはない?」
阪井は、手帳を見ながら言った。
「いいえ、見ませんでした」
「じゃあ、緒形君は何か部活に入ってた?」
いきなり、事件と関係のなさそうな事を訊かれたので、後藤は呆気にとられた。
「いいえ、入ってなかったです。あいつは将来、大学院に進学したいらしくて、勉強が忙しかったんです」
「なるほど。成績も優秀だったんだろうね」
「はい。あいつは、同級生からいつも頼りにされていました。・・・あの、そろそろ練習に戻ってもいいですか?もうすぐ、試合が控えているので」
「ああ、忙しい中、ありがとう。もう戻っていいよ」
手帳を閉じながら、阪井は言った。
後藤は一礼すると、練習に戻っていった。
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