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区立病院に着くと、時刻は午後6時を過ぎていた。
正面にある入口から入り、受付で名乗ってから、阪井は入院している緒形の母親について訊いた。
「この病院に、緒形君のお母様が入院していらっしゃると聞いたのですが」
「ええ、3階の105号室におられますよ」
受付嬢は、さらりと答えた。
「3階の105号室ですね。ありがとうございます」
そう言うと阪井は、軽く頭を下げた。
3階へは、階段を使って上がった。
長い廊下の真ん中辺りに、その病室はあった。
ドアをノックしてから、病室に入った。
病室には、壁の角に沿って4つのベッドが置かれていた。
その内、左奥にあるのが亜希子のベッドである。
しかし、そこに亜希子はいなかった。
「緒形さんなら、2階に行ってると思いますよ」
隣のベッドで寝ていた老婆が言った。
「2階に?何をしに行かれたんですか?」
阪井は訊いた。
「2階の病室に、知り合いがいるらしいんです。それで、ちょっと会ってくるって言ってました。もうすぐ戻ってくると思いますが」
老婆は普段から、亜希子と親しくしているようだった。
亜希子を待っている間、普段の彼女の様子などを聞かせてくれた。
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