第四章

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 阪井の自宅は、12階建てマンションの3階だった。 部屋に入ると、着ていたダウンジャケットを脱ぎ、床に放り投げた。 部屋は1DKで、ベッドと冷蔵庫、小さなテーブルが置いてあるだけだった。 テーブルには、小型のノートパソコンが置いてある。 阪井は、冷蔵庫の中から缶ビールを1本取り出した。 それをテーブルに置くと、阪井はパソコンを起動させた。 グーグルにアクセスし、「藤本琢磨」と検索した。 検索結果は、殆どが弓道の大会に関するものだった。 阪井は缶ビールを開け、喉に流し込んだ。 結局、事件に関係のありそうなサイトはなく、阪井はパソコンをシャットダウンさせた。 大の字で床に寝転がる。 と、左手に何かが当たった。 見ると、山積みになっていた新聞紙が崩れていた。 阪井は、元に戻そうと新聞紙に手を伸ばした。 その時、下の方にあった新聞の記事に目が留まった。 そこには、次の様に書かれていたからだ。 「男子高校生(18)自殺」 20日午後16時ごろ、東京都台東区のマンションで、高校3年生の藤本泰希君が手首から大量に血を流して倒れているところを母親が発見し、110番通報した。直ちに病院に搬送されたが、間もなく死亡が確認された・・・
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