第四章

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 女性は、藤本紗江子と名乗った。 藤本琢磨の母親である。 家に入ると、二人は和室に通された。 「お茶を淹れてきますので、ここで暫くお待ちください」 女性は言った。 「いえ、お構いなく。お話を伺ったらすぐに帰りますので」 山岡が答えた。 「そうですか。では、最初に何から話せばよろしいですか?」 阪井は、手帳を取り出した。 「まず、あなたの家族について聞かせていただけますか?」 「ええ。夫と、長男の琢磨。・・・それと、次男の泰希がいましたが・・・2か月前に・・・自殺しました」 そう言った紗江子の声は、僅かに震えていた。 阪井は、やっぱり、と思った。 「それは誠にお気の毒なことで・・・。お悔やみ申し上げます」 阪井は、頭を下げた。 山岡もそれに倣う。 「それでは、この人に見覚えはありますか?」 阪井は、手帳の間に挟んだ写真を差し出しながら言った。 その写真には、緒形の顔が写っていた。
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