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女性は、藤本紗江子と名乗った。
藤本琢磨の母親である。
家に入ると、二人は和室に通された。
「お茶を淹れてきますので、ここで暫くお待ちください」
女性は言った。
「いえ、お構いなく。お話を伺ったらすぐに帰りますので」
山岡が答えた。
「そうですか。では、最初に何から話せばよろしいですか?」
阪井は、手帳を取り出した。
「まず、あなたの家族について聞かせていただけますか?」
「ええ。夫と、長男の琢磨。・・・それと、次男の泰希がいましたが・・・2か月前に・・・自殺しました」
そう言った紗江子の声は、僅かに震えていた。
阪井は、やっぱり、と思った。
「それは誠にお気の毒なことで・・・。お悔やみ申し上げます」
阪井は、頭を下げた。
山岡もそれに倣う。
「それでは、この人に見覚えはありますか?」
阪井は、手帳の間に挟んだ写真を差し出しながら言った。
その写真には、緒形の顔が写っていた。
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