第四章

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 「いいえ、知りません」 紗江子は、首を横に振りながら言った。 「そうですか」 阪井は写真を手帳に挟んだ。 「では、昨日の午後4時半頃、何をしておられましたか?」 「ええと、買い物に行っていました」 「そうですか。その時、家には誰もおられなかったんですか?」 本当は、単刀直入に藤本が家にいたかどうかを訊きたかったのだが、それを言ってしまうと、怪しまれる可能性があった。 「いいえ、琢磨が留守番をしてくれていましたが・・・」 「どうかされたんですか?」 「ええ。あの子は、私が留守の間にどこかに出かけていることがあるんです。出かけるなら、私に一言伝えるように言ってあるんですが・・・」 紗江子は、俯き加減で話した。 「では、先ほど話された弟さんについてお聞きしてもよろしいですか?」 阪井は訊ねた。 すると紗江子は、俯き加減だった顔を更に下に向け、考え込むような表情になった。 その後、顔を上げると「いいですよ。どうぞ」 と言った。
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