11人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいえ、知りません」
紗江子は、首を横に振りながら言った。
「そうですか」
阪井は写真を手帳に挟んだ。
「では、昨日の午後4時半頃、何をしておられましたか?」
「ええと、買い物に行っていました」
「そうですか。その時、家には誰もおられなかったんですか?」
本当は、単刀直入に藤本が家にいたかどうかを訊きたかったのだが、それを言ってしまうと、怪しまれる可能性があった。
「いいえ、琢磨が留守番をしてくれていましたが・・・」
「どうかされたんですか?」
「ええ。あの子は、私が留守の間にどこかに出かけていることがあるんです。出かけるなら、私に一言伝えるように言ってあるんですが・・・」
紗江子は、俯き加減で話した。
「では、先ほど話された弟さんについてお聞きしてもよろしいですか?」
阪井は訊ねた。
すると紗江子は、俯き加減だった顔を更に下に向け、考え込むような表情になった。
その後、顔を上げると「いいですよ。どうぞ」
と言った。
最初のコメントを投稿しよう!