触れてくれるなら。

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その声を聞いたとき、 普通なら「アイ」さんとやらに嫉妬や、なんらかの黒い気持ちが生まれるんだろうが、私は何の気持ちも抱かなかった。 そんな自分に正直驚いた。 なぜかというと、 私は自他共に認める恋愛体質で、成人を迎えて思春期とは呼べなくなった歳でも、好きな人ができたら友達に 「花が飛んでる」 「オーラがピンク」 と言われるほどだ。 昔、学生時代付き合っていた彼氏に浮気をされ、その時は彼氏への怒りではなく、彼氏の浮気相手への嫉妬で狂いそうになった。 なぜ自分は「アイ」さんに何の気持ちも抱かなかったのかは、多分、 「アイ」 と呼ぶ、彼の心は決して幸せそうなものではなさそうだったからだ。 むしろ見てるこっちが痛々しく、今にも彼の悲痛な叫びが聞こえてきそうで嫉妬など考える余裕がなかった。
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