001 迷子と迷子

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「参ったなぁ」 実に参った。 見知らぬ森に漂着して早3日。 未だに迷いに迷って、動けば動くほどに迷っている気がする。 金はあれど飯がない。 飯はないが金はある。 金ってこういう時、実に無力だよなと思わざるを得ない。 なにも食っていないわけじゃないが、いい加減木の実とか草を食うより肉とか噛み後耐えのあるものが食いたい。 そうしなきゃ、栄養にも偏りが出るし。 「しかし…」 肉を食いたいならば動物だ。 こんだけ深い森、方向感覚が狂いそうな深い木々のカーテン、空気が美味しい素晴らしい土地、にも関わらず俺はこの3日間、“生き物の気配”というのを何一つ感じていない。 というか、木しか見た記憶がない。 小鳥のさえずりすらも聞いてないし、樹木の根で浮き上がった地面を凝視して見ても虫一匹すら見てない気がする。 「幸いにも水には困らないんだよなぁ。水先を歩いても出られないんだが」 なぜか水だけは豊富で、探せば濁りのない綺麗な川はいくらでも見つかるのだ。 …もちろん、魚は見てない。 異常、ということに気がついたのは1日目。 というより、この森に入って少ししてからだ。 何も気配を感じないこの森は異常だ。 森から出ようにも来た道が、プツリと切れてしまっていて、それは文字通り、存在していなかったかのようになくなっていた。 そして、代わりに新たな道が出来ている。 全く新しい、見知らぬ道が、だ。 そんな異常に振り回されて早3日。 未だに出口は見つからず、こうして歩き回ってはまた見知らぬ道に出るを繰り返している。 「あー…こういう場合、だいたいは妖精とかが助けてくれるんじゃないのか。それか女神、あるいはこの異常の原因の何かがとかさ…」 我ながらに頭の悪い発言である。 だが、察してほしい。 出られない森を延々と歩き回る苦労さを。 生き物すらいないんじゃ愚痴も言いたくなるものだ。
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