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「冗談じゃ。しかし、死ねはさすがに酷いと思うぞ…」
てっきり殴られるかと思ったのに、なにやらシュンとなって傷付いた乙女みたいな顔になった。
「ワシはな…迷子なんじゃ。何年も何年もこの森をさまよい歩いては迷子になっては……そうじゃ、寂しかったんじゃなぁ」
「あ、」
……同じ迷子、だったのか。
しかも何年もとか言ってた辺り、ずっと一人でさまよっていたのだろうか。
何年振りに誰かに会えたことで気分が高揚してても仕方がないかもしれない。
「……ごめんな、言い過ぎたよ」
そう考えたら、本当に俺が言い過ぎだ。
「……とか言ってみたらワシのことを可哀想な悲劇的ヒロインみたいな扱いを受けるかの?」
…………。
前言撤回。
やっぱり死んでほしい。
「なんじゃ、主も迷子なのかえ」
そうやって何度も漫才もどきを繰り返しながらようやくここまで辿り着いた。
「まぁ、予想はしてたんじゃがな。こんな異常な世界に迷子以外におるやつが思えないしの」
「……異常な、世界?」
異常な森、の間違いではないのか。
まるでそんな、世界“そのもの”が異常みたいな言い方はおかしいと思う。
おかしいのはこの森なはずだ。
「違う違う、何年も何年も迷子になるとじゃな。分かってしまうんじゃよ。この森はな、この世界はな、自分がいた世界とは“別”の世界なんじゃよ」
「……“別”だって?」
「そう、いわゆる異世界。どうやら主も、ワシと同様に異世界に続く次元の狭間に踏み込んでこの世界に来たようじゃ」
……納得は、いく。
歩けど歩けど、出るのは見知らぬ道ばかり。
四日も歩き回って、それでも未だに見知らぬ道ばかりに出るのは、果たしてこの森が異常なのか?
世界そのものが異常なのだと考えたほうが、色々と納得が行き過ぎて……そして、グランディスを見て頷いた。
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