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「先に行ってなかったの?」
「うん。一緒に行こうと思って迎えに来たんだけど。そうしたら怒鳴り声が聞こえて、心配になって。何かあったの京香」
「ううん。何でもないよ」
「嘘でしょ」
…………。
「京香は一人暮らしなのに、京香の家から男の人が出て来たの見たよ」
「あぁ、彼ね。彼は……」
口ごもった。これ以上は話せない。
これは私個人の問題。私個人の怨み。
友達は巻き込めない。雛なら尚更だ。
「……言いたくないなら言わなくてもいいよ」
雛は無愛想な私を察してくれた。
「いいの?」
「う~ん。本当は今ここで何があったか問いただして、何もかも洗い浚い吐かせたいところなんだけどね」
笑顔で怖い事言うなこの娘。
雛は一拍子間を開け、
「でも、もしそれで京香が傷付いたりしたら。悲しんだりしたら。京香と会わせる顔がないもん」
雛。そこまで私の事。
「あ、ありがとう」
「いえいえ、私は何もしてないよ。でもこれだけは約束してね」
「約束?」
「言いたくないなら言いたくないで、お互いどんな秘密事もなしっていう約束」
「うん分かった」
「それじゃ行こっか」
◇
私の住んでいる街は『世界の全てを賄う機械』の技術が取り入れられても街並みに変化はなかった。けれど二色大学の街、『飛鳥(あすか)』は大いに違っていた。街の科学力を誇示するように『世界の全てを賄う機械』の技術が惜し気もなく披露されていた。
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