一章

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「博識なのですね。ワームホール形式は現在二色大学でしか研究されていませんのに」 「……まぁね」  母がその研究の第一人者だからね。“現在”研究してる組織は二色だけだけど。 「念のために確認しますけど、安全性に問題はないんですよね? 腕がもげたりちぎれたり」 「ご安心下さい。そのためのワームホール形式ですので」  ここで戸惑ったりしてくれれば安全性に絶対の自信がないと指摘して断れたのに。 「(はぁ。これに乗るのか)」  渋々プレートに乗る。グォン!! と視界が一瞬眩しく光った。目が光に慣れ、視界が鮮明になっていく。同時に転送されてきた雛と目を合わせた。 「……すごく」 「……大きいです」  プラネタリウム状のガラス張りの会場。テレビ局のカメラが数百と並びながらも数千の学生が難なく入れる会場。生徒達の学費と博物館の入園料から博物館の維持費を差し引いても、大学だけの資金では到底建てられないような設備だ。『世界の全てを賄う機械』の三割を造った技術の報酬は桁違いのようだ。 「うわぁ、人多い。ところで渚未来の場所はどこかな。これじゃあ見つけられそうにないね」 「これだけ人がいるのにスペースが有り余ってるんだからもう適当にしててもいいんじゃない?」  これ以上動きたくないし。 「そんな事言わずに一番前に行こう行こう」  普段の静かで冷静な雛はどこへ行ったやら。こんなにキャピキャピ活発で興奮した雛は初めてだ。まぁ、科学者に憧れているのだから最新技術に目がないのは当然か。 「いや、私はここ――」 「キャッホーイ!!!」  あ、壊れた。  私を無視し強引に先頭まで移動させられる。  雛は近くにあった博物館の展示品らしきガラスケースを発見し食いるように見つめ、 「見て見て京香、『限りなく人間に近い機械』の製造途中のレプリカだよ!!」 「そ、そうだね」  私はその完成……。 「ん? 急に暗い顔してどうしたの?」 「ううん。なんでもない。それよりも始まるみたいだよ」 「うわ~すご~い、永久機関『ナノダイア』の模型だって」 「……訊いてないし」
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