一章

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 理由は明白。不可能を覆し可能へと変えてきたオーバーテクノロジー『世界の全てを賄う機械』が人の手中に簡単に収まるかどうか。機械はプログラムされた指示に従い動く従順な僕だけれど、力関係は圧倒的に機械が上。重機相手に生身の人間じゃ絶対に勝てないし、機械が暴走すれば人間の手には負えなくなる。  その上位に属している機械が人間の身体を持って敵対しているこの状況は、人間にどうこう出来るものではない。  だからきっと、あいつは警備員も何もかも退けてここにやってくる。 「来る。必ず来る」  どういう理由があるか知らないけど、あいつにとって私は、世界に名を馳せる科学者達よりも優先されるべき価値がある。実際に、他を差し置いて真っ先に私に飛びついたんだから。だから逃げても無意味。このままじゃ殺される。 「ハハッ。なに? だからって諦めろって?」  私は死を選ぶくらいなら抗ってやる。無様でも無意味でも無価値でも。どんな手段を使ってでも抗ってやる。  それになにより、機械から逃げるのは“あいつ”に負けを認めるのと一緒だ。あいつには何があっても絶対に負けたくない。  思考を巡らせる中で、私の覚悟は固く決まった 「ヤってやる。死ぬくらいなら最後までヤってやる」  機械相手には厳しいかもしれないけど、弱者には弱者なりの戦い方がある。例えば弱さを外部から補強したり。幸いここには鈍器や凶器になりそうな物品が山ほどある。武器には困らない。  何か使える物はないかと館内を探索した。  あいつがここに着くまで多少なりの時間はあるだろうから、その間に対等に抵抗できる策を考えないと。警備員には申し訳ないけど時間稼ぎをしてもらう。  館内を探索していると博物館のエリアで気になる表記が目に留まった。 『寄贈品』
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