一章

7/34
前へ
/75ページ
次へ
「(中身は何だろう)」  そんな考えが頭を過ぎった。  答えが解らないから知りたい。  先が見えないから見たい。  何が起こるか分からないから試してみたい。好奇心が私の奥からゾクゾクと沸いてくる。  異常な出会いが怖いもの見たさを更にかき立てた。 「開けても平気だよね」  根拠なんてどこにもない。  開けて無事な確証もない。  それでも、今ある感情を抑えきれない。  私は棺桶の蓋に手を掛けた。 「…………」  言葉が出なかった。  中に入っていたのは人形。それも精巧に精密に至精に人間に似せて作られた人形。長くもなく短くもない髪。男なのに凛とした顔立ち。執事服を沸騰とさせ、渚未来の制服に酷似した藍色の服。棺桶内を色取り取りの花が飾っており、器の棺桶もあってか、葬式のイメージを湧かせる。  見た瞬間から私の中に不思議な感情が芽生えていた。  初対面(?)のはずなのに幼馴染にも似た馴染み感。  友人と数年ぶりに会ったような懐かしさ。  どこかで会ったような既視感。  初めての感覚が全くしなかった。  ついつい、吸い込まれるように見入ってしまう。 「…………」  パチクリと人形の目が開く。  見事に目が合った。  そのまま数秒間見つめ合う。 「う……」 「?」 「うわぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあ!!」  間抜けな声を上げながら男から遠ざかった。  男は人間らしい動きで上半身を上げ…… 「ちょ、ちょっと!! そこから一歩も動くんじゃないわよ!! 出たりなんてもっての外だから!!」 「はい了解しました」  無機質な表情で肯定。意外にも言う通りにしてくれた。てっきり反抗してくるのかと思ったけど。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加