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「(何よ何よこれぇぇぇぇぇぇぇぇ!! 何で人形が一人で勝手に動いて喋ってんのよ。しかもずっと無表情でこっち見てるし)」
もっと離れたいけど壁際まで来たからこれ以上は下がれない。
「あの……」
「な、何よ!! なんか文句あるわけ!? か、かかってきなさいよ!!」
「いえ。そのような用件ではないのですが」
「じゃあ何が用件なのよ!!」
お金!?
もしかして母さんのお金が目当て!?
「か、金ならあるから好きなだけ持ってさっさと出て行きなさい!!」
「いえ。請求でもないのですが」
「何よ!! は、早く言いなさいよ!!」
「何と御呼びすればよいかと」
「は?」
突然の事態に私は完全に狼狽していたようだ。無意識に頭に浮かんだ言葉をそのまま口ずさんでいた。
「お……御嬢様……?」
「かしこまりました御嬢様」
誠意全開でお辞儀された。棺桶に入ったままで。やばい、急展開過ぎてついていけない。なにこの状況。誰か説明して。
「…………」
ウィィーンと機械音を鳴らしながら男は無感情な双眸で私を熟視してくる。
「な、何見てんのよ」
御嬢様発言で拍子抜けして幾分かは慣れてきた。
「視認情報から御嬢様の個人データを登録しております」
個人データ? 登録? なんだか機械みたいな事を言うやつだな。
「髪型……セミロング。髪色……茶。身長……百五十一㎝。バスト……七――」
「なに勝手に人の個人情報漏らしてんのよぉ!!」
取り合えずむかついたので殴ってやった。見知らぬ相手を殴れた自分を褒めてやりたい。
「そんなに強く殴ると痛いですよ。御嬢様が」
「~~~~~っ!!」
かってぇぇぇぇぇぇぇ!! 岩や鋼鉄を殴ったような痛みだ。拳が潰れるかと思った。
「(何でこいつこんなに硬いわけ。人間鍛えたらここまで行けるものなの)」
実際、行けるわけはないんだけれども。
「泣いてますよ」
「な、泣いてないもん!!」
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