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ジンジン痛む拳を押さえ込む。男に痛がっている様子はない。
相も変わらずに空虚な表情を浮かべている。
虚空な瞳。
無機質な表情。
もしかしてこいつは、
「あ、あんた、まさか人間じゃない」
自分でも浅はかな考えだとは思う。人間離れしてるだけで決め付けるのは――
「はい。外見上はこれですが生物学的には私は人間に分類はされません」
「……はい?」
え、ボケてきた? なにこれ私はツッコめばいいの?
「私は御嬢様が確信を持って申したのかと思いましたが。ですが合っていますよ。私は生物学上、人間には分類されず機械に分類されますから。御嬢様ならこの意味、御解りですよね」
「機械……」
納得だ。こんな感情が欠落したような顔をするのは機械しか他にない。
「はい」
男は首肯。
私は即座に、頭の中から科学に関する『世界の全てを賄う機械』の情報を、ここまで精巧に人間に造られた機械の情報を知っている限り引き出した。
最終的な結論は、
「いや、でも違う」
「違ってはいないと思いますよ。話してみて下さい」
まさかと思ったからそれを口にするに多少のためらいがあった。
「『限りなく人間に近い機械(リアルマネージメント)』」
「はい。正確には完全な別物ですが、似たようなものですのでそう解釈なされても差し支えません」
『限りなく人間に近い機械』。通称『リアルマネージメント』。
私達人間がいなくなった事態を想定して人間を機械で賄おうとするプロジェクト。
人間の代わりに機械を働かせるのではなく機械で人間を造ろうという計画。
『世界の全てを賄う機械』の最終目標であり到達点。
未だ誰も完成させた事がない科学者達の理想郷。
機械で人間を造るのは不可能だと言われ続けても、それでもなお研究を止めない科学者達が身を削り、血の滲む努力をした結果が、私の目の前にいる。
そう。私の嫌いな――機械。
「何……で」
「?」
「何であんたがここにいるのよ!!」
身体が熱かった。私は、胸の奥底から煮えたぎるこの黒い感情を声に込めて怒鳴った。今あるこの忌々しい想いを全部ぶちまけた。
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