現状説明を兼ねたとある日のお話

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 その日、困りに困った末に、俺、鈴嶺龍也は、中学校来の友人である柚原鈴音に電話をした。  因みに、友人は女だ。先に言っとくが、こいつとの間に恋愛感情なんてものは一切ない。純粋な友情だ。 『なに?また馬鹿で子供でKYな転校生がなんかした?』 「非常にムカつくことだがな」 『だよね。電話越しにうるさい声が聞こえるもん』 「部屋に来た。チェーンロックはかけてるが、ドアの前で喚いていて、少し開いた隙間から聞こえてうるさい。しかも、そろそろチェーンロックが外れそうなんだが、どんな馬鹿力なんだ」  電話越しに、呆れたようにため息が聞こえた。  最近の、この友人との会話は、もっぱら2週間前に来た転校生による問題ばかりだ。  季節外れの転校生は、一言で言えば、マリモだった。  モッサリヘアーに、分厚い、今時どこで売られているか解らないような眼鏡。もはや顔が全く見えない。  そんな外見だから、中身は根暗だと思ったら、180度違った。とにかく、目立ちたがるし、自分勝手な正義を相手に無理やり押し付ける。おまけに声は無駄にでかい。どうやったらこう育つのか解らない、痛いやつだった。  それなのに。  どういうわけか学園で有名な美形達を次々と落としていった。崖に落としたのではない。恋に、だ。  別に、誰が誰を落とそうと興味は無いし、どうでも良いのだが、そういう訳にはいかないのが現実だ。  俺が通う東宝学園は、伝統ある全寮制の学校である。所謂金持ち学校で、様々な大企業の社長や政治家など、将来日本を背負ってたつ人間がこの学校に入学する。
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