逃げれども逃げれども。

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足の親指と人さし指の間の皮がベロリとめくれて見えた。 お風呂に入ってもヒリヒリとしみる。 原因は、履きなれない草履の所為だってわかってる。 「はぁ」 声に漏れるのは溜め息というものだ。 理解してる。 あたしはどうやら、台風の目の中にいるんだ。 こうしていれば、きっと大丈夫。 静かだし、恐くない。 台風は、時速何キロの速度なのか。いずれは暴風域に入るかもしれない。 だけど、そうならないように、大人しくしろと台風に呼び掛けてみるんだ。 なんて思っても、無理。 だってさ。 「おはよう」って、あたしの好きな人は、毎日姿を表すんだ。 家の中で。 この渦巻く想いが台風に変化したってわかってるんだ。
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