1・見上げたいのは――

13/28
前へ
/30ページ
次へ
…… やばいやばいやばいっ! ……もしかしたら、かなりやばいかもしれないっ。 私は、もしかしたら変質者だと認識されてしまっているかもしれないっ。 密かに、ただ和みの対象として密かに密かに見つめていたその視線は、実はあけすけで、気持ち悪くて、いやらしかったのかもしれない。 だから、この人は気づいて。いざというときに通報するために名前を覚えられてて…… 「――名札」 「っ?」 「スーパーで、名札してるでしょう。僕、なんだかそういうの見てしまうんだよね。気持ち悪かったら謝ります」 私じゃなくて自分が気持ち悪いのだ、と言われてしまった。 「あっ、いいえっ、そういう意味で言葉に詰まったんじゃなくって……」 「そうですか? なら良かったです」 ――あ。言葉が、また離れた。 何故か寂しく感じてしまったことと、私よりも申し訳なさそうな表情をするこの人に、あまり嘘はつきたくないなと思った。 「――バイト先の常連様を、朝、駅でいつも見かけるなあって……ガン見し過ぎて、名前覚えられてたのかって、ちょっと後ろ暗かったんです」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加