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そして、突然しゃがみ込んだ。
「えっ? あのっ、大丈夫ですかっ?」
その動作は俊敏で勢いがあったため、エコバッグの中のタマゴからまたかわいそうな音が響いた。
顔色を確認するために私も同じ体勢になって、もっと低い位置から覗き込む。
「……僕……そんなに所帯じみて見えますか?」
「え?」
「ショックだ。友人たちの中では、まだダントツ老けたようには見えないはずなのに……」
「あの……そういうことではないですから。どうかご安心を」
なんでそこまで落ち込むのかはあまり理解出来なかったけど、そうして、ようやく立ち上がってくれてまた歩き出す。
私は罪悪感からか矢次はやに言葉を綴る。
「同じ歳っ……には思わないけど若いっ! 若いですっ!! やっぱり家庭を守っているという包容力が滲み出てるんでしょうっ」
「ありがとう。そんな気を使わなくてもいいですよ。――でも、ひとつ訂正を」
そうして次は、私が口を大きく開けて自分の発言の失態加減を悔いることとなる。
「僕は、結婚してないし、パパでもないかな。家を守ってるというのは、少し正解」
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