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向こうのホームに電車が滑り込んできた。途端にあの人がいるホームへの視界は強制シャットダウンされてしまい、次に視界が開けた時には、もうそこには降車したどこぞの誰彼しかいなくて。
次の瞬間には、私側のホームにも電車がやって来て、もう問答無用でぎゅうぎゅう詰めの箱に押し込まれた。
ここからしばらく、息苦しい通学時間が続く。
まあ、それは私だけじゃあないんだし、今日は友達も一緒だから、気分は少しだけ上々。
ひとりの毎朝は、秘密裏に、反対側のホームのあの人の爽やかな顔を糧に、してないことも、ない。
こんな回りくどい言い草は、別に捻くれてるからじゃないんだと自分に言い訳する。
きっと、こんなことも私だけじゃあないんだ。
誰だって日々の癒しは必要で、勝手に誰かをその対象にしてる。
通りすがりの赤ちゃんや柴犬に心を持ってかれるなんてこと――ほら、みんなあるでしょ?
そういえば、あの人は、どちらかといえば和の犬みたいな印象かもしれない。
感じたことが楽しくなってしまい、ひとりにやけると、ぎゅうぎゅう詰めで密着する友達から首を傾げられてしまった。
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