1・見上げたいのは――

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惚れ惚れするようなスムーズな乗り換えのせいで、バイト先には最短の所要時間で着いてしまった。これじゃあまるで、志願して穴埋めに来たみたい。 ローカルなスーパーに制服はないから、髪をまとめて支給されたエプロンを身に着けるだけ。 ものの数分でタイムカードを押すと、慌てる店長がひとりで切り盛りしていたレジへ走った。 「いやー。笹本さんマジ感謝」 「……いいえ。遅くなってすみませんでした」 社交辞令で言ったつもりなのに、店長は頷く。 少しむかついたけど、午後六時過ぎのスーパーにはまだお客様も大勢いて、店長に構ってる暇なんてなかった。 「すみません。おまたせしました。お次をお待ちのお客様、こちらへどうぞ」 促した先のお客様は、私の家のご近所さんだった。 「あら、栞ちゃん」 「こんばんは、おばさん。今帰りですか?」 「そうよ~。今日は少し遅くなっちゃったわ」 知った顔に出会ってしまうと少し気が緩む。ミスをしないようにと再度気を引き締めながら、いつの間にかズラリと並んだお客様に笑顔で対した。
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