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別に、普通のお客様とバイトの店員なだけなんだから。何か会話を交わすわけでもないんだから。
ただただ、私は接客用語を放って、あの人はありがとうと一言律儀に言ってくれて、そうしていつもの通り終わる。
――ああ、でも、今日は二回も姿を拝めたからラッキー。
少しだけ、店長への溜飲も下げてあげた。来るって決めたのは私なんだしね。
今日もあの人の買い物カゴの中身は、ちゃんと自炊する材料の商品たちが溢れていた。
嗜好品であるビールは、帰宅後にあの人が晩酌をするんだろうか。奥さんにお酌とかしてもらって。
百%のオレンジジュースは、お子さんが大好きなのかな。いつも買っていくから。
私の大好物、厚切りポテトチップスは、いったい誰が好きなお菓子なんだろう。一緒だったら、少し嬉しいかもしれない。
勝手に妄想の対象にしてるのは申し訳ないけど、夢見る年頃全般の病は、楽しくて仕方ない。
家族をきっと大切にしていて、いつもあんなに爽やかで、優しそうで、ちょっと嫌いじゃない顔のあの人がいけないんだ。
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