孔雀

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ガヤガヤと慌ただしく賑わう夕暮れ時。 ある親子が行きつけのでデパートで食品を買い、その帰りに立ち寄ったレシートの表示された価格分だけ福引を回せるという抽選に並んだ。 親子仲がよく、母1人娘1人の家庭である。 その為なかなか忙しく、滅多に旅行など行ったことのない娘だったが、穏やかで明るく、純粋に優しい子に育っていた。 レシートを娘に差し出し、母親が目を細めて笑う。 母: ささね。クジ、ひいてみなさいよ。 苦く笑いながらも長い列を作る福引客に悪いと思ったのか、そそくさと福引の前に足を歩める娘。 笹鈴: え~、私クジ運無いから駄目だょ。 掴んだレシートを見せ、半ば諦め顔でガラガラと福引きを廻し始めた。 ―カツン― やがて、金色の球が音を立て転がり落ちる。 高校2年、春休みの始まりの日、クジが当たった。
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