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『君に頼みたい任務があれば、こっちから連絡するよ。それまでは今まで通り、日常生活を続けくれ』
「了解。それじゃ……」
『うん。まあ気長に待っているといいよ。じゃあね』
そう言葉を交わして涼は通話を終えた。
受話器を戻し、涼は自室へと戻る。
(新しい相棒……か)
ベッドに横たわりながら、そんな事を考える。
見たこともない存在を想像する事は困難である。
またいくら想像したところで、現実と一致する事など殆ど無い。
だから涼は直ぐに新しい相棒について考える事を止めた。
それよりもまず優先して考えるべき事柄があるからだ。
『死の神との因縁か……難儀な事だな……』
ふと、そんな声が涼の頭の中に響いた。
「まあ……ね。でもアイツは僕の倒すべき敵だ。だからいつでも戦えるように準備をしなきゃいけない」
『倒す……それは即ち、神を殺すということか?』
その声の主、村雨丸はまるで覚悟を確かめるかのようにそう問い掛けた。
「………………」
その問い掛けに、涼は即答出来なかった。
それは村雨丸が言いたい事を理解している事に加え、そこまで具体的に考えた事がなかったことが原因だった。
誰かを護る為に戦う。
聞こえは良い。だがそれを実践するために涼はこれまで数多くの妖怪を“殺して”きた。
そしてそれはこの話にも適応される。
死神の自己中心的な行動を止める。
だが止めろと言って止めるような相手ではないし、そもそもその程度で止めるようなら始めからしようとしないだろう。
ならば死神を倒すしかない。
つまるところ殺すしかない。
神殺しは重大な罪である。
ただでさえ、人間側の都合で多くの妖怪を葬ってきた涼である。
死後は極楽浄土に行くことなどできないだろう。
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