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「適当すぎじゃない」
「うるせぇな。じゃあお前が考えろって」
「そうね」
母親が作り笑顔になり、後ろを振り向く。
「いい?空が青いのはね、お月様が…」
彼女がそう告げようとした時、娘は窓から何処か遠くを見つめていた。
「どうしたの?」
まるで銅像のように固まって動かないために、母親は少し奇妙に思いそう問い質す。
「白いのがいる」
娘は無表情でそう告げた。
「白いの?」
「なんか…すっごく動いてるの」
娘が見ていた先は海の方向だった。
母親は目を凝らし、何やらその白いものを探す。
あった。
確かに蠢いていた。
海のど真ん中に、激しく踊る白い何かの姿があった。
「何これ…」
彼女は眉を潜める。
距離が非常に遠く視界に捉えるのが困難だが、辛うじて人型をしている事はわかった。
白い何か
「どうした?」
父親は運転し前方を見ながらそう問う。
「海面に変な白いのがあって…何か変な動きをしてるの」
「浮きじゃないのか?養殖用に開発した奴…みたいな」
「そう思いたいけど、何か…本当に変な動きなのよ…」
母親は目を凝らしながらそう問う。
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