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「くねくねと奇妙な動きで…本当に気持ち悪い…何これ」
娘と母親は不愉快が混じった表情で、ずっとそれを凝視する。
「…そんなに気になるのか?」
「うん、双眼鏡ない?」
「双眼鏡?」
「遠いせいかよく見えないの、それで更に気になっちゃって」
「…後部座席にないか?」
「んーと…」
娘は四つん這いになって釣り道具を漁る。
「ないよ!」
「確か釣りポイントの探索用に持ってきてたはずなんだが」
父親は赤信号で停止している間に、身の回りに双眼鏡がないか手探りで探し始める。
「ああ…あった」
「貸して、早くしないと見えなくなっちゃうし」
「まぁ待てよ」
彼は双眼鏡を目に当て、海を全体的に確認し始める。
「ああ!ずるいわ!もう!」
母親は拳をグーにして悔しそうにそう告げる。
「早い者勝ちだよ、お前らが面白そうに見てたから、結構ジラされてたんだぞ?」
「もう…場所わかる?ホントに海の真ん中だから」
「ほう…ほうほうこれか…うん…」
「ん…?」
双眼鏡でその白い何かを確認できたのか、父親の表情が急変する。
「青になったわよ」
「わかってる」
父親は双眼鏡を外し、それを片手にアクセルを踏む。
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