第一章『白い何か』

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「くねくねと奇妙な動きで…本当に気持ち悪い…何これ」 娘と母親は不愉快が混じった表情で、ずっとそれを凝視する。 「…そんなに気になるのか?」 「うん、双眼鏡ない?」 「双眼鏡?」 「遠いせいかよく見えないの、それで更に気になっちゃって」 「…後部座席にないか?」 「んーと…」 娘は四つん這いになって釣り道具を漁る。 「ないよ!」 「確か釣りポイントの探索用に持ってきてたはずなんだが」 父親は赤信号で停止している間に、身の回りに双眼鏡がないか手探りで探し始める。 「ああ…あった」 「貸して、早くしないと見えなくなっちゃうし」 「まぁ待てよ」 彼は双眼鏡を目に当て、海を全体的に確認し始める。 「ああ!ずるいわ!もう!」 母親は拳をグーにして悔しそうにそう告げる。 「早い者勝ちだよ、お前らが面白そうに見てたから、結構ジラされてたんだぞ?」 「もう…場所わかる?ホントに海の真ん中だから」 「ほう…ほうほうこれか…うん…」 「ん…?」 双眼鏡でその白い何かを確認できたのか、父親の表情が急変する。 「青になったわよ」 「わかってる」 父親は双眼鏡を外し、それを片手にアクセルを踏む。
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