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「はい、……あの、交際相手にお金を貸していたんですけれど、そのせいで借金に追われて、首がまわらなくなってしまって、彼とは連絡がとれなくなって、それで、もう駄目だと」
「助けてくれそうな人もなく」
「……はい」
沈んだ声が、泣き出しそうに震える。電話口で泣かれるのはうっとうしい。募集人は八階に着いたエレベーターから降り、自室へ続く廊下を歩きだしながら、さくさくと話を進めることにした。
「そう、誰も助けてくれなかったがためにここまで追いつめられたあなたの人生は、その最後に協力者を得るわけです。いいですか、最後くらい思い通りにいきたいでしょう? そして孤独なはずのあなたは、協力者の支えを受けながら死ぬことができるんです」
「……はあ……」
「では、よろしいですね? あと、あなたの髪型をお教え頂けますか?」
「……ショートカットです」
「染めたりしていますか?」
「いいえ。お金がなくて……」
金がないだなんて、そんなことはどうでもいい。不明瞭なくせに余計な言葉を添えようとする相手に、募集人は更に苛立ってきた。
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