志願者募集

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 彼女が申し出てきてくれたお蔭でこの計画がスタートするのだと頭では分かっていても、生理的に受け付けないものはしょうがない。もう、さっさと話を終えて、この通話を切りたくなっている。 「分かりました。では、さきほど申し上げたように渋谷で相手の方と待ち合わせをなさって下さい」 「……あ……はい」 「では。御武運をお祈りいたします」  言うだけ言って、募集人は通話を切った。そしてバッグから部屋の鍵を取り出し、ドアを開けて、自分の部屋の匂いを嗅ぎながら玄関をくぐった。現在、午後九時少し前。これからシャワーを浴びて、ビールを呑みながら一息つこう。そうしているうちに、昼間の電話が悪戯でなければ、他殺志願者からの二度目の電話がかかって来るだろう。    午後十時を少しすぎた頃、募集人の携帯が着信を告げて、静かな室内に電子音を響き渡らせた。 「はい、もしもし」  募集人は公衆電話からであることを確かめて通話を繋いだ。はたして、相手は昼間の女性からだった。 「昼間にお話しました他殺志願者ですけど、自殺を志願なさる方は出ました?」  しゃきしゃきとした喋り方は、耳に清々しかった。
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