二人

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 秒針の、じりじりと刻まれてゆく時の動きに意識を集中する。壁画の傍らにある交番は静まりかえっているように見える。うしろめたいながらも、何だか涼しそうで羨ましかった。この場所は何だか居心地が悪い。  とりあえず、相手が来たら適当な店に入ってアイスティーを飲もう。どっしりしたグラスに、細かくクラッシュされた氷がたくさん入っていて、澄んだ色の紅茶が氷と混ざりあいながら光るアイスティー。そう思いながら壁画に背を凭せかける。  時計の進み方がやけに遅く感じられる。約束の時間はもう二十秒すぎた。三十秒、四十秒……一分……。  そして横から遠慮がちに「……あの」と声をかけられたのは、約束の時間を数分すぎてからだった。 「はい」  声で応えながら、他殺志願者は顔を振り向けた。自殺志願者の声は少し高めで、緊張のせいか裏返っていた。重そうな色のショートカット、御丁寧に一本だけをラッピングした白バラ。間違いなく彼女だろうと確信する。  他殺志願者は、ようやく現れた相方の頭から爪先までを、さっと見てみた。古びていないのに、どことなくくすんで見える服。化粧もごく普通に整えられているのに、どこかぱっとしないものがある。
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