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ハナコはもの思いにふけるような表情で、じっと車内の空間に目線を投げ出していた。
吉祥寺に着くまで、二人の間に会話はなかった。駅を出て、必要最低限のやりとりでホテルを決め、コンビニエンスストアで食料と飲み物を仕入れ、チェックインして二人きりになった時、ようやく会話が再開された。
「まずは方法なんだけど」
「はい」
ベッドに座り、ペットボトルのアイスコーヒーを一口飲んで喉を潤し、カオルから提案する。
「やっぱり、確実な方法は首吊りだと思うのよ」
「はあ……」
「嫌なの? 何か希望する方法があれば言ってね」
「特に、ないんですけど」
「けど?」
「苦しそうだなあ、って」
ぼんやりとした面持ちでハナコが答える。カオルにはとっさに返す言葉がなかった。本来ならばまだ続くはずの命を絶つのだ、何で苦しくないことがあろうかと思う。どんな方法をとったとしても、必ず苦痛を伴ってしかるべきなのだ。
「首吊りはね、運が悪い場合を除いて、体重がかかった瞬間にぐっと死ねるんですって。苦しむ時間は短いものだって」
「あ……そうなんですか」
「ええ。でもあなた、本当に希望する方法はないの? あれば協力するけど」
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