志願者募集

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 そんな人間が一人ずつ、自分の遊びに興味を持ってアクセスしてくれればいい。そうすればゲームは始まるのだ。――成功するか否かはともかくとして。  募集人は安い喫茶店に入り、アメリカンコーヒーを注文して、クッションの固い椅子に腰を落ち着けた。携帯電話を取り出し、マナーモードにしてテーブルの上に置く。それがいつ着信を告げるかと見つめながら、スラックスのポケットからタバコを取り出して火をつける。一服しているうちに、薄くて熱いだけのアメリカンコーヒーがテーブルに運ばれる。募集人は不味いなと思いながら文句は言わずにコーヒーをすする。安い喫茶店では味など望んではいけないのだから、しょうがない。ここで払う二百八十円は、電話を待つ間の席料だ。  電話は、そうすぐに鳴るものではないと思っていた。今回はどうなるだろうかと色々予測しているうちに、募集人は自らの空想にはまってゆく。携帯電話から意識が離れる。すると、その油断を狙っていたかのように携帯がブルブルと震えだす。着信は公衆電話からだった。 「……はい」  周りの迷惑にならないように、周りの耳につかないように、声を低めて電話を受ける。
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