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そこに映っていたのはかつて蘭子を、水蓮をも苦しめたその人物、氷翠だった。
「……なぜ、やつが“j”に……」
だが分からなくもない。彼女の行動はいつも気まぐれ。ただ快楽があるだろう場所ならどこででも求める。
だからこそ危険ーー
「どうするの?蘭子ちゃん」
「とりあえず狙いは李白とかいう男だ……できたらこの女との戦いは避けたいが……」
聞いてきた天照に蘭子は答える。そしてまた考え込んだ。
「……あの塔は『陰陽の塔』という、古代の“異端”が作ったものでとある絶対的仕掛けが二つほど施されている」
「……それは?」
恐る恐るその仕掛けとやらの正体を天照が尋ねた。
「1階から100階まである塔、全ての守護神の封印を解かなければ、頂上までいけん。当然各階にその守護神の封印を解く扉を守るものがいるはず。容易には通れんだろうな」
「わーぉ。そいつは気長な挑戦になりそうだね」
「他人事みたいに言うな。天照。もうひとつの条件もなかなかいいもんじゃないんだぞ。まさに李白にあの塔を占拠されたのはしてやられたということだ」
蘭子はてのひらを返しながら、古の塔がそびえ立つ先を疎ましく見つめる。
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