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そんな至極単純なことを思っていたら一馬は勝也の言葉を聞き逃していた。
「え"~~~~???!」
勝也の言葉の意味を知ったのは美香が驚きの叫びのあとそれを繰り返したおかげだった。
「修学旅行で北京????!!!!!」
「北京???!!!!」
一馬も思わず美香の言葉に反応して立ち上がっていた。
「ど、どうした?!二人とも!!そんなに修学旅行の北京が嬉しかったのか、それとも嫌なのか??!!」
勝也はそんな二人の反応に当然の如く、戸惑う。
クラスメイトも驚いて一馬たちの方に注目していた。
一馬は慌ててごまかす。
「な、なんでもねぇよ!!!」
直ぐに座った一馬にならって美香もまた直ぐに席につく。
「そ……そうか?じゃあ修学旅行の栞を配るぞー」
勝也はそれ以上は深くは追及せずに手元にあった修学旅行の資料を配り始める。
その栞を手元で眺めながら、一馬は思っていた。
これはもしかしたら……
とんでもないチャンスなのかもしれない。
栞を握り潰す一馬の表情はとある決意で固まっていた。
(俺は諦めねぇぜ、エース)
勝也の話す修学旅行についてのことなど全く耳に届かないほど一馬はただ遠くの地に一人で消えてしまったエースのことだけを考えていた。
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