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先ほどから雲行きが怪しい。
空にはゴロゴロゴロゴロと雷の落ちる前兆のような音が永遠となり続けている。
だが雨は降っていない。
空はあくまでかわいていた。
だからこそ、どうしようもなく嫌な天気だと思ってしまう。
エースがこの街から消息を絶って、既に一週間が経過していた。
彼は突然、一馬たちの目の前から姿とそして存在を消していなくなってしまったのだ。
理由は分からない。
エースの関係者たちに聞いてもただ『知らない』の一点張り。
どうすることも出来ないもどかしさが余計に目に映る天気を濁らせているのかもしれない。
「高橋ーどうしたんだ?ぼーっとして」
クラスメイトの一人が心配して声を掛けてきてくれた。一馬は慌てて首を振る。
「……なんでもねぇよ」
「一馬は次のテスト科目が現国だから悩んでんだよなぁー」
劉生がそんな間に入ってきてわざとらしく一馬をからかってきた。
「あのなぁ……そういうお前こそどうなんだよ?
平均80以上取れねぇと推薦枠なんてとても無理なんだろ?」
「それを言うなよー!!うわっ、マジ頭痛くなってきた!!ジロちゃーん、ここなんて書いたー?俺はCって思ったんだけどさー」
仕返しと言わんばかりにジト目を向けながら一馬は劉生をその場から追っ払う。
そしてまた一つだけある不自然な空席に目を向けてしまう。
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