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「……ここは……」
目覚めたところは何故か真っ暗な世界だった。先ほどまで塔にいたはずなのに、爽吾の頭は多少混乱している。
「トルデ、いる?」
一応、冷静さをまだ保ててるうちに爽吾は身の安全が取れる状況なのか相棒の存在を確認した。
「ちゃんといるよ」
トルデは割りとしっかりとした口調で答える。爽吾を安心させるための態度だろう。
「……そっか。良かった」
この“塔”では住民と意思疎通を遮断され、“異端”の力が使えなくなることもあるらしい。
それは通常の体力がない爽吾に対して『死刑宣告』をされているようなもの。
トルデの声が聞こえたことに彼は本気で感謝した。
「……ところで、」
「ーーオイラにも分からない」
「ここはどこなの?」と尋ねようとした爽吾だったが、先に回答を返される。
爽吾はトルデのその早さに直ぐに言おうとしていたことを飲み込んだ。
「……とりあえず、歩いてみようかな……」
このまま立ち止まっていてはどうしようもないーーそう思った爽吾はある種の決意を固めて一歩ずつ一歩ずつ進み始めた。
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