第五十五話

49/79
前へ
/345ページ
次へ
「……優しいんですね……所詮、偽物なのに……」 「偽物だろうと、君が作ったものだろうと……存在する命にどうしてそういうことが簡単に出来るの??!!!!」 「……爽吾……」 あの爽吾が初めて本気で怒っている。トルデにはそれが伝わってきた。 彼は他人の為に怒れる男なのだとこのとき知った。 「君のこと、僕は許せない」 「……奇遇ですね。僕も君のことが大嫌いですよ?」 爽吾と爽吾ーー二人の闘いはトルデには到底止められそうになかった。 「……ふざけやがって……!!!!」 目が覚めたら暗闇に一人立っていた自分に訳が分からず、恭一は悪態をつく。 「きょーいち、暴れたってなんにもなんないよ~!!!!!」 事実、ヒナの言う通りどんなに暴れたって空間が壊れることはなかった。 「……チッ……」 「なにか方法があるはずなんだよ!ここから出られる方法がっ」 ヒナは必死に希望を恭一に訴え続けようとしている。 ーーハッキリ言ってうざかった。恭一だって今それを探している最中なのだから。 「どったの?」 「……いやーー」 立ち止まった恭一をヒナが不思議に思ったのか直ぐに聞いてきた。恭一は即座に答えることが出来ない。
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加