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ーーそれは、何か薄寒いようなそんな感覚だった。
(……なんだーーこの嫌な感覚は……)
「……あ、あれ……誰かいるみたいだよ?」
ヒナのおずおずとした声に反応して恭一は顔を上げた。
「!!!!」
そこに立っていたものに恭一もヒナも驚愕した。
ーー自分と同じ顔、同じ姿でそいつはそこに居た。
強い憎しみの色を瞳に浮かべて。
「……きょーいち、じゃないよね……??!」
その男はヒナの言葉に顔をゆっくりと上げる。
「……なんで……やっぱりきょーいち……?!」
「俺はここだ……ふざけやがって……
人の顔をパクるな!!!!!!」
恭一はキレて自分と同じ顔をした男に棍棒で殴り掛かる。
ヒナの迷いを断ち切る為の一撃でもあった。
だがその恭一の行為は更なる混乱を呼ぶことになる。
何故なら恭一と同じ顔をした男は彼と全く同じ武器でその一撃を止めたからだ。
「……なんだと……」
ヒナはもちろん、恭一でさえこの事態が上手く飲み込めずに言葉にすることが出来なかった。
「君は一体誰なのさ??!」
「……誰でもない。誰だっていい。
お前らにそんなことは関係無い」
ーー何もかも突き放すようなその一言に恭一はかつての自分を重ねた。
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