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正確にはそうーーキングと恭一が出会う前の自分に目の前の男はそっくりだった。
何も見えていない、何も信じていない……彼の目はそれをハッキリと物語っていた。
だからこそ、恭一たちは言葉に詰まる。
目の前に過去の自分がいること自体、恭一は信じたくなどなかった。
そしてその過去の自分自身の投影は恭一に強い憤りを込めて言う。
「……裏切り者が……消え失せろ……!!!!」
それは強い怒りの感情だった。
ーー恭一の表情は完全な動揺の色に包まれる。
何に対しての裏切りなのか、ハッキリ言って思い当たる節は沢山ある。
誰も要らない、誰も信じない、人間なんて大嫌いだ、自分なんて大嫌いだ……!!!!
みんなみんなみんな、殺してやる!!!!!!
かつての自分はただ毎日をそう思って生きてきた。だからこそ、今の自分は昔の自分からしたら全てに置いて裏切り者なのかもしれなかった。
だって今の自分はもう誰も恨んでいない。全てが消えた訳じゃないけど、少なからず“幸せ”を感じることが出来るから。
孤独じゃあ、ないからーー
勝てるのだろうかーー
恭一の頭に弱気な想いが過る。
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