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勝てない、勝てるわけがない。
昔の自分になんてーー
孤独で戦い続けていた自分になんてーー
勝てるなんて思えなかった。
それが余計に恭一の判断を鈍らせた。
目の前の『他人を消すこと』しか頭にない自分の影に少なくとも今恭一が抱いている想いはない。
飛びかかってきた男の棍が真芯で恭一の身体を貫いた。
「きょーいちぃいいいいッツ!!!!!」
ヒナの絶叫と共に恭一は血を吹き出して、その場に倒れ込む。
紫姫は暗闇の中を一人歩いていた。
正確にはヒュドラもいるが、歩いているのは紫姫一人なのでその表現は嘘じゃないだろう。
「しかしここは一体どこなんだかねぇ……」
こうまでして周りに何もないと紫姫だって流石に気が狂いそうになる。
ぼやいてみるも答えは出そうになかった。
紫姫は仕方なくまた歩を進める。
「!!!!」
「……よう、」
「アタシ、じゃねぇよなぁ?」
目の前に立ち塞がるように現れたそれは紫姫と同じ顔をしていた。
紫姫は怪訝な表情を隠さずに問いかける。
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